女性が幸せなまちNo.1を目指せ!町長に事業提案プロジェクトがスタートしました。寒川町役場の女性職員の皆さんと女子学生の合同チームで、町長に事業提案します。
計画当初はすべて対面で開催する予定でしたが、コロナウィルス感染拡大により、すべてオンラインでの開催に。そのため、全6回、1日5時間のワークショップを確実3時間に短縮し、チームごとのワークを増やすなど、運営側も試行錯誤しながら進めています。
前回は事前研修について説明しました。今回はプロジェクト全体のプロセス、工夫した点、それでもなお克服できなかったことについて共有できたらと思います。
全体の流れ
8月5日から9月24日までの1ヶ月半、全体で集まってのワークショップは6回です。ハナラボでは実践まで行う長期プロジェクトが多いのですが、寒川町では企画提案までの1ヶ月半で終了しました。全体の流れを見ていきましょう。
- オリエンテーション
- インタビュートレーニング
- リサーチ・インタビュー実践
- 課題を捉え、解くべき課題を設定
- アイデア創出
- コンセプト作成
- 企画書作成
- プレゼンテーション
- 振り返り
企画のフェーズでは、リサーチを行い、ビジョンを描き、問いを設定し、ユニークなコンセプトを生み出すことを目指します。実践こそありませんが、多くのメンバーにとって、ゼロからイチを生み出す新しい経験となりました。
【1】オリエンテーション
COVID19の感染拡大に伴い、急遽オンラインでの実施が決まったプロジェクト。前途多難のスタートでした。というのも、寒川町では一人一台のノートパソコンがない、オンラインミーティングに耐えうるインターネット回線がないという状況だったのです。正直、想定外でした。
もし、みなさんがこの状況でプロジェクトに参加しなければならなかったら・・・しんどいですよね。状況を見つつ、プログラムを変更して乗り切りましたが、参加者のみなさんには多大なストレスをかけてしまったと反省しています。
さて、オリエンテーションでは・・・
- プロジェクトの目的・ゴールを説明
- リサーチ(特にインタビュー)に関するレクチャー
を行いました。順に説明していきますね。
【教訓】
自治体とのプロジェクトでは、オンライン環境が整っていない可能性があります。必ず確認しましょう。すぐに環境が整わないとしても、参加者にその旨を伝えておくことで、ストレスは軽減できます。
1. プロジェクトの目的・ゴールを説明
プロジェクトの目的やゴールを共有することは、とても重要です。なぜ、このテーマに取り組むのか、腹落ちしていなければ「やらされ感」が強くなり、ビジョンを描くことすらできません。
英国デザインカウンシルのSystemic Design Approachフレームワークに当てはめて考えてみると、「ORIENTATION AND VISION SETTING(オリエンテーションとビジョン設定)」に該当しますね。
プロジェクトの目的とゴールを文章にまとめ、参加者に提示しました。
寒川町は、東京駅から電車でちょうど1時間。古代から人々が暮らす、歴史のある町です。1600年以上前に朝廷から位を受けたと云われる寒川神社は、八方除の守護神として有名な神社で毎年多くの参拝者が訪れます。「やさしさ」「あたたかさ」「おだやかさ」「品格」が寒川町の特徴です。
寒川町民の幸福度を統計学的に調査したところ、傾向として「ゆるやかなつながり」を増やすことで、効果的に幸福度が向上することがわかりました。一方で、幸福度の4つの因子のうち 「やってみよう! 因子」が全国平均を100とすると80であり、特に低いことがわかりました。
また、20代の女性の転出率が高く、住み続けたいと考える人は20%以下でした。一方で、30代では36%以上、40代では43%以上が住み続けたいと考えています。
若い女性たちが寒川町に興味関心を持ち、ミレニアルズ世代の女性がより幸せを感じるまちにするためには、どんなことが考えられるでしょうか?
町の総合計画に沿って、新しい事業を提案してください。
20代女性の転出率が高いという事実から、ミレニアルズ世代の女性を対象としていますが、もちろん、女性だけで幸せになれるわけではありません。ミレニアルズ世代の女性を中心に置きつつも、誰がどのように関わっていくのかについても考えていく必要があります。
ワークショップのたびに、この文章を提示し、なんのためのプロジェクトなのかを思い出してもらうようにしました。それでも、最後まで腹落ちしていない人もいたと思います。職員のみなさんは研修として参加したため、どれくらい負荷がかかるのか理解していない方が多かったという背景もあります。
2.リサーチ(特にインタビュー)に関するレクチャー
現時点では、大きなテーマは提示されているものの、チームごとのテーマは決まっていません。誰のどんな課題を解決するのか?誰にどんな新しい価値を提供するのか?それを見つけるために必要なのが、リサーチです。
英国デザインカウンシルのSystemic Design Approachフレームワークに当てはめて考えてみると、デザイン活動の「EXPLORE(探究)」に該当します。
対象やその周辺を観察したり、実際に体験したり、関係者にインタビューしたり・・・さらに、論文やネットでのリサーチも必要です。どれも大切なリサーチですが、外せないのは現地に行くこと。コロナ禍のため、全員でフィールドワークができなかったので、各自寒川町を訪れることを必須としました。地域を目で見て肌で感じ、さらに地域の方にお話を伺うことで、自分たちなりの視点を得ることができます。
話を聞くためにはインタビューのスキルが必要、ということで、レクチャーでは特にインタビューについて詳細に解説。インタビューの心構え、本音を引き出すための質問などを具体的な事例を含めて説明しました。講義が終わり、ようやくチームでの自己紹介です。
【2】インタビュートレーニング(チームビルディング)
寒川町プロジェクトでは、学生3名・職員2名の5人でチームを組みました。学生を職員がサポートするという形ではなく、5人が一つのチームとなってプロジェクトに取り組みます。
まずは自己紹介からスタートです。事前に用意してもらった、一人ずつ、プロフィールシートとモチベーショングラフ(人生を曲線で表したもの)を共有しながら話し、その後、チームメンバーからインタビューの練習を兼ねてインタビューをしていきました。終了後、プロジェクトにおける自分自身の目標を設定します。
その後はワークショップのたびに、それまでの期間の動きに対して、チームメンバー一人ひとりにポジティブなフィードバックを行い、さらにチームでできたこと・起きている問題・改善策について話し合いました。この個人へのフィードバックとチームでの振り返りによって、少しずつチーム内での信頼関係が育まれていきました。
英国デザインカウンシルのSystemic Design Approachフレームワークに当てはめて考えてみると、「CONNECTIONS AND RELATIONSHIPS(つながりと関係性)」に該当しますね。
対面でのワークショップであれば、チームの活気が他のチームにも影響します。しかし、今回はオンラインのため、他のチームの様子がわからず、最後まで遠慮しあって意見交換がうまく進まないチームもありました。それでも、誰一人脱落することなく、オンラインでのプロジェクトをやり遂げられたのは毎回の振り返りの時間があったからでしょう。
【教訓】
オンラインでもチームビルディングはできますが、リアルに比べると信頼関係を築くまでに時間がかかります。全員初対面で、しかも世代も立場も異なる状況での困難さがありました。
これでオリエンテーションは終了です。
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